立身出世主義の布教

 

日本の就学率は学制公布直後は本当に低く、日本各地で学校の破壊活動さえも発生していました。

 

 

では就学率がなぜ上がり始めたのかというと、そこには立身出世の思想が大きく関わってきます。

 

 

被仰出書と個人の出世

 

 

学制が公布されたのと同時に被仰出書(おおせいだされしょ)と呼ばれる文書が出されていたのですが、その文章というのは簡単に説明すると「学問に励めばあなたも将来出世して豊かになれます」という期待感を抱かせる内容です。
 
 
学制が始まる前の日本国では、学問というのは個人の出世の為ではなく国(藩)のために行うものだとされていました。それも支配階級だけに必要とされ、大多数の庶民には基本的には必要とされていなかったのです。
 
 
また江戸時代までは日本は身分社会であり、武士の子供は武士で農民の子供は農民だったので例外的な場合を除いて立身出世の意欲など持つ意味がありませんでした。
 
 
しかし学制は国民皆学を実現させることを目的とした制度ですので、今までのように一部の人や支配階級の人間しか学ばないという事態になっては困ります。
 
 
そこで、被仰出書にある「学校で勉強すれば貧しい家庭のあなたでも将来豊かになれます」という立身出世の思想を全面的に国民に布教し始めたのです。
 
 
学制自体がもともと西洋諸国の義務教育制度が元になっていることはお伝えしましたが、その中には個人主義というものが関わってきており、個人の繁栄・成功は国家の発展につながるという思想がありました。

 
 
逆に言うならば学校で勉学に励んでいれば将来出世できるという思想を国民に植え付けない限りは、殆どの家庭が子供を学校に通わせるような事は有り得なかったと言えるでしょう。
 
 
そして、この立身出世主義の布教に加えて国民が負担していた授業料の金額を徐々に減額・無償化するなどしてようやく日本の就学率は上昇し始めたのです。
 
 
余談ですが、あなたが小学校に通っていたのであれば二宮尊徳(二宮金次郎)という人物の像が置かれていたはずです。
 
 

 大抵の小学校などに置かれていたはずですし、そうでなくても教科書で見た事がないという人は日本人であればかなり少ないはずでしょう。

 
 


 二宮金次郎の像がなぜ小学校などの校庭にまつられているのかは、ここまで読んで下さったあなたならばもうお分かりでしょう。
 
 
 勿論子供たちに二宮金次郎を見習い、勤勉に育って欲しいからという理由もあったでしょう。ただ、最大の理由はそこではありません。
 
 
最大の理由は国が義務教育の就学率を上げるために「あなたも学校で勉強を頑張れば出世できます」という意味付けを子供たちに与える為だったのです。 

 
 
二宮金次郎はもともと農家で、家も決して裕福ではありませんでした。
 
 
しかし勤勉に働き学んだ結果、農民から武士の階級まで出世したので明治以降の子供に勉強する意味を持たせるには十分すぎるほどの存在だったわけです。
 

 

だからこそ1872年(明治5年)から始まった日本の義務教育の就学率を上げる為の手段として、二宮金次郎の出世ストーリーを子供立ちに見せつけ彼らに就学意欲を持たせることが目的だったのです。
 
 
義務教育のヒーロー的な理想像として国が学校に像を設置していた、というのが実態です。


トップページ プロフィール お勧めの書籍 広告掲載など お問い合わせ